2012年10月に韓国人窃盗団が日本の対馬から2体の仏像を盗み出し、韓国に持ち込むという事件が起こった。その後、韓国国内では「この観世音菩薩(ぼさつ)座像はあくまで盗品であるため、国際条約に従って返還すべきだ」という意見と、「高麗末に倭寇によって略奪された可能性が高いので返還すべきでない」という両方の意見が対立し、6年にわたって裁判所で保管されるという異常事態が続いている。
海外に存在する韓国の文化財について20年以上にわたり実態調査を行ってきた筆者の立場からすると、この観世音菩薩座像を巡る論争はあまりにも感情的になっているように思える。しかも一連の経緯から、この問題が韓国と日本の感情的な争い、あるいは行き過ぎた愛国主義という別の形に変質してしまうと、海外に残る文化財の還収にも何らプラスにならない。
文化財の還収は国民全体が望んでいるが、一方でこれは国家次元の問題であり、国同士による外交的な話し合いによって解決するしかない問題だ。感情や個人の活動によって解決できるような性質のものではないのだ。
国立中央博物館が今年12月に開催予定の高麗建国1100周年記念特別展「大高麗展」を準備する過程で、対馬の仏像を巡る韓国での裁判所判決の影響もあってか、日本の寺などが高麗時代の仏画などの貸与に消極的になっているとの話も聞こえてくる。また対馬の厳原港周辺のおよそ30ある土産物店のうち、7店では「韓国人立ち入り禁止」という張り紙が貼られているそうだ。
たとえ貴重な文化財であっても、それがどのような経緯で日本に渡ったかは確認されていない。倭寇が仏像を略奪した可能性ももちろん考えられるが、断定はできない。しかも窃盗犯が盗んできた盗品について「われわれのものだから手に入れた経緯や方法に関係なく無条件で取り戻すべきだ」などと主張するのは、文化財を取り戻す正当な行為とは言えない。
問題の観世音菩薩座像は今後も「日本から盗んできた仏像」というレッテルが貼られるため、信仰の対象として崇拝するのも難しくなるだろう。
韓国で作られた仏像を日本人が長い間保管し、信仰してきたという事実を軽く考えるべきではない。今後はわれわれも自らとらわれている思い込みから抜け出し、浮石寺自ら中心となって観世音菩薩座像を対馬に堂々と返還すべきだ。これが実現すれば韓日関係を改めて発展させる素晴らしいきっかけにもなるだろう。朝鮮日報より
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年9月24日月曜日
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