2018年12月1日土曜日

アグネスは大きなため息 ウクライナの現実

国連児童基金(ユニセフ)アジア親善大使を務める歌手のアグネス・チャンさん(63)が20年にわたって、アフリカやアジアの紛争地を訪ね続けている。今年は6月下旬、「忘れられた紛争」と呼ばれる軍事衝突が続くウクライナ東部を訪れた。訪問に、記者も同行した。

「あんまり長くそこに立っていないで。スナイパーがあちこちにいるから」

ウクライナ東部、マリンカの検問所でカメラを構えると、ウクライナ政府の警備隊員に大声で怒鳴られた。近くにいたアグネスさんも足早に移動した。

マリンカは、ウクライナから独立を訴える親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍が相対する地点。457キロに及ぶ境界線をはさんだ両派の衝突は4年以上続き、いまも約60万人が断続的な砲撃の中で暮らす。

強い日差しの中、100人以上が並んでいた検問所を訪れたのは、午前11時前。銃を手にした迷彩服姿の警備隊や警察が目立つ。

検問所が開くのは午前6時から午後8時。1日に約1万1千人が行き来するという。多くが高齢者だ。ルボフさん(76)は墓参のため、月に1回は検問所を通る。「ウクライナ側で1時間、親ロシア派側で3~4時間待つこともある。吹きさらしの中で立って待つのは大変。特に(零下20度以下になる)冬はきつい」と漏らした。

年金の受け取りや親族訪問、買い物など、生きるために、人々は境界線を行き来する。

アグネスさんの強い希望で実現した検問所の視察の後、私たちはマリンカ第2学校に移動した。そこで学ぶ、ミーシャという名の10歳の少年が住む村は、両派の境界線上にある。多くの家屋は砲撃で破壊され、ほとんどの住民が避難したが、母子家庭のミーシャ君は避難することもできず、砲弾が飛び交う中で暮らす。

3年前には砲弾で頭を大けが、2回も手術した。「もしかするとまだ頭に小さな破片が入っているかもしれない。でもいまは、以前と同じようにサッカーもできるよ」とミーシャ君。アグネスさんが「砲撃は怖くないの?」と問うと「もう慣れた」と答えた。

朝日新聞デジタルより

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