8月29日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、全国瞬時警報システムが発動されました。日本に対する直接砲撃の可能性が実際どれくらいあるのかについては軍事専門家の分析にお任せしますが、いずれにせよ万が一の「有事」に備えるべきとの認識は強まっているようです。
もし日本が戦争になれば、私は家族を国外に逃がしたい。(中略)もし生き残って日本に平和が戻れば、家族を呼び戻すが、日本が崩壊すれば、子供達はそのまま外国で暮らせばいい。
日本がもし戦場になったら「家族を国外に逃す」ことや「子ども達がそのまま外国で暮らす」ことはそんなに簡単なことなのでしょうか?あまり考えたくないシナリオですが、万が一日本国内が戦禍に見舞われた際に日本人が国外避難できる可能性について考えてみたいと思います。
1.「難民・避難民」として避難できる?
まず日本は島国ですので、外国に逃れる場合には空港や港湾が通常通り機能していることが大前提となります。また国外に出るのですから(行先によっては有効期限が数か月程度残っている)パスポートも必要です。更に日本から国外逃亡しないといけないような状況下では、日本の金融機関も機能不全に陥っている可能性がありますし、海外滞在期間も長期になることが見込まれるので、かなりの金額の現金を持参することも必要でしょう。
次に行先ですが、幸い日本人に対しては入国前のビザ取得を免除している国が多いですし、到着した際に入国審査の直前でビザを購入できる仕組みにしている途上国も多いので、とりあえず飛行機か船に乗れればいずれかの外国に辿り着くことは可能でしょう。また、多くの国が日本人に対して、30日ないしは90日までは観光目的(就労は不可)であれば短期滞在を認めていますので、とりあえず入国して短期間なら滞在することは可能でしょう。ただし米国については、飛行機などに搭乗する前に「電子渡航認証システム」に申請し事前承認を得ることが国家国土安全保障省により義務付けられていますので、注意が必要です。
では、当初の短期滞在(例えば30日や90日など)が過ぎた後はどのような資格で中長期に滞在することができるでしょうか?まず、日本が戦争になった場合には他国で「難民」として受け入れてもらえればよいと思っている方もいるかもしれませんが、外国からの攻撃により母国が戦禍に見舞われている状況を逃れた人は、国際法上「難民」とは認められません。過去のブログで繰り返し述べている通り、「難民」とは「迫害」を逃れた人であり、差別的要素が一切ない一般化された暴力や紛争を逃れた場合は「難民」とは認められないのです。
EU諸国ではそのような紛争や一般化された暴力を逃れた人々に(難民としての庇護ではなく)「補完的保護」を与える場合もありますが、アジア諸国でそのような制度を設けている国は韓国しかありません。そして日本が攻撃されるような状況下では、韓国がどのような状況になっている可能性があるのかは前回のブログで触れた通りです。
米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにもそのような「補完的保護」に相当する制度がありますが、当然すべて英語で手続きを行う必要があり、各国の入管法や実務に詳しくない一個人が全ての手続きを済ませるのは至難の業でしょう。どうにか弁護士などを雇って「補完的保護」(やそれに相当する地位)を得られたとしても、滞在期間は通常1年毎の更新で、上限も3年や5年と決まっています。
またEU諸国はシリア難民で既に手一杯ですので、「補完的保護」制度を日本人にまで認めてくれるかどうか、楽観視はできません。確かに、既にその国(例えばドイツなど)に安定的な地位で在住している外国人(この場合だと日本人)に、全ての財政的面倒を自らがみることを条件に、その親族を(例えば日本から)呼び寄せることを認める西欧諸国はあります。でも、そのような海外在住の親族がいる日本人は少数派でしょう。
2.「移民」としての海外移住は?
では、そのような人道的保護を受ける方法ではなく、より一般的な意味での「移民」として海外移住するにはどのような可能性があるでしょうか?一旦「観光」や「短期滞在」などの在留資格で入国した後、その他の滞在資格に変更することも制度上は可能です。けれどもどの国においても、より長期の滞在資格に変更するにはかなり様々な条件が付いているのが現状です。
滞在国によって移住・滞在制度は千差万別ですが、少なくとも、
1)滞在期間に働かなくても生きていける十分な資金(預金残高)があること、
2)滞在国の公用語(例えば英語など)の充分な能力があること、
3)滞在国政府からその国の経済に有益と認識される程度の投資や起業を行うこと、あるいは
4)滞在国の経済や社会に貢献が見込まれる極めて特殊な技能を有していること、
2)滞在国の公用語(例えば英語など)の充分な能力があること、
3)滞在国政府からその国の経済に有益と認識される程度の投資や起業を行うこと、あるいは
4)滞在国の経済や社会に貢献が見込まれる極めて特殊な技能を有していること、
などが、在留資格(一般的な言語でいう「ビザ」)が発給される最低条件になっているのが一般的です。また子どもや若者については「留学生」として滞在が許可されるかもしれませんが、相当額の授業料を払う必要がありますし、親に後見人としての滞在が認められる保障はありません。
あまり明るい結論ではありませんが、冒頭で触れた作家がツイッターで言ったように国外逃亡してそのままその国に暮らすことは、残念ながらそれほど簡単なことではないのです。日本が戦禍に見舞われるような事態にならないよう、切に願いたいものです。 ハィフントンポストより
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