2017年9月26日火曜日

北の核ミサイル開発で浮かぶ「側近科学者」

海外の軍事専門家が目を見張る北朝鮮の核ミサイル開発は、どのように進められているのか。核弾頭と弾道ミサイルそれぞれの分野で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に仕える「側近科学者」たちが、開発計画を強力に推進する構図が浮かび上がってきた。いずれも縁故に頼らない実力主義で登用され、金委員長の科学信奉が鮮明だ。海外留学する若手の育成も進み、経済制裁の包囲網が狭まる中でも、自力で開発をやり切るとの懸念も出ている。
 
「水素爆弾の爆音は血の代価で成し遂げた朝鮮人民の偉大な勝利」。6回目の核実験に成功した金委員長は、10日に平壌で開かれた祝賀の宴会でそう述べ、実験に貢献した科学者をねぎらった。宴会には、核弾頭開発を担当する2人の科学者の姿があったかもしれない。ロイター通信によると、元寧辺原子力研究所所長のリ・ホンソプ氏と党中央委副部長のホン・スンム氏は、3日の核実験の直前に配信された写真で、金委員長のそばに立つ姿が確認された。

核開発が進むにつれ、2人が国営メディアに露出する機会が増え、ロイターは、「ホン氏が党幹部として開発計画を指揮し、リ氏が実務レベルで実験を仕切っている」との韓国専門家の見解を紹介した。

リ氏がかつて所長を務めた寧辺原子力研究所は、北朝鮮の核施設の中心。研究所を訪問した米専門家によると、リ氏がプルトニウム生産を独力で成し遂げたことを「誇らしげに語った」という。ホン氏は2000年代半ばから党軍需産業局に在籍。金委員長が実権を握ると頭角を現した。欧州やロシアで教育を受けた経験があるという。

この2人は以前も、北メディアが配信する写真で、弾頭の模型を視察する金委員長に随行していたという。一方、弾道ミサイル開発でも同様に、写真から「3人組」の技術者の存在が知られている。この3人とは、元空軍司令官で朝鮮労働党軍需産業局の李炳哲(リ・ビョンチョル)副局長、ロケット技術者の金正植(キム・ジョンシク)氏、国防科学院の張昌河(チャン・チャンハ)院長。金委員長に実力を買われ、抜擢(ばってき)されたという。
米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)は金委員長の念願だ。核弾頭と弾道ミサイルの開発に携わる計5人とは個人的な関係を築いているとされる。金委員長の威光を背景に、少人数の「側近科学者」が、強力な権限を持って開発計画を進めているとの見方が成り立つ。

一方、米紙ウォールストリート・ジャーナル(7日、アジア版)によると、多数の北朝鮮の若手研究者が海外留学し、核・ミサイルに活用可能な技術を習得して祖国に持ち帰っているという。留学先は主に中国で、中には、ミサイル発射時の振動抑制につながる技術を研究した者もおり、具体的な研究内容も明らかにされた。

「軍民両用技術」の習得などを通じ、北朝鮮がすでに「核のゴールに向けて独力のノウハウを習得した恐れ」があるとの米政府関係者の見方を、同紙は伝えている。  
産経ニュースより

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