■EEG装着者の脳波データをリアルタイムでネット上に公開
脳とコンピュータの融合を提唱している人物は多い。かのイーロン・マスク氏も、脳に埋め込むタイプの超小型デバイス“ブレインチップ”の開発に着手しているのはご存じの通りだ。
しかし一般の人間にとって心理的なハードルになるのはやはり外科手術を伴うことである。しかし一方で、ヘッドセット型、あるいはキャップ型の通称「EEG」と呼ばれる外科的な措置を伴わない脳波計測装置も高性能化が進んでいる。
南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学の研究チームが、市販のEEGを使って脳波をリアルタイムでインターネット上へライブストリーミングとして配信することに成功した。こうした試みが行われたのは史上初のことで、研究チームはこの試みをブレインとインターネットをかけあわせた「ブレインターネット(Brainternet)」と呼んでいる。
研究チームは市販のEEGである「Emotiv EEG」と、主に教育機関で活用されている小型のシングルボードコンピュータであるRaspberry Pi(ラズベリー・パイ)を使ったシステムで、14カ所の脳波のリアルタイムな活動状況をウェブサイトで公開した。脳波の詳細な電気的な動きがネットを通じてリアルタイムで公開されたのは史上初となる。
「このブレインターネットは、脳=コンピュータ・インターフェースの新たな最前線です。これまで、人間の脳の働きと情報処理過程を理解する上で、手軽にアクセスできる脳波の電気的活動データがありませんでした。このブレインターネットは継続的な脳波のモニタリングとインタラクティブ性を通じて、自分自身と他者の脳の理解を簡素化することを目指しています」と研究チームを主導したアダム・パンタノウィッツ氏は語っている。
「EWAO」の記事より
EEGを装着した人物の脳をネット上でリアルタイムで観察できるということは、さまざまな可能性をはらんでいる。例えばチャット機能を使ってEEGを装着した自分に「右手を上げてみて」とリクエストし、手を上げた時の脳波のパターンを確認したりすることができる。少しずつではあれ、いろんな人物からのこうした脳波データが蓄積されてくれば、脳活動と身体活動の関係性などが徐々に解明されてくるのではないだろうか。そしてこうした研究が深まることにより、将来的には脳波で簡単に操作できるOSやアプリなどの登場も現実味を帯びてくるだろう。
「Futurism」の記事より
パンタノウィッツ氏は今回の試みはプロジェクトの最初の一歩であると捉えている。研究チームは現在、EEG装着者と閲覧者の間にさらにインタラクティブな体験が可能になるようシステム面での改良に尽力しているという。この機能のいくつかはすでにサイトに組み込まれているがまだ非常に初歩的なもので、今のところは先ほど例にあげたように腕の動きなどに限定されている。
「ブレインターネットは、機械学習アルゴリズムのためのデータを提供するスマートフォンアプリを通じて、記録の分類をさらに向上させることができます。 将来的には、脳へのインプットとアウトプットという双方向の情報伝達ができる可能性があります」(アダム・パンタノウィッツ氏)
つまり近いうちにスマホのアプリを通じて多くの人から大量の脳波データが収集できることになり、収集された“ビッグデータ”を分析することで、電気的信号によって脳とコンピュータの双方向コミュニケーションが可能になる日もそう遠くないのだ。また昨今急激な進歩を見せるAIが、もうすぐ人間の脳活動を学習する段階に入るということで、ゆくゆくはこれらの技術が連携することになる。10年後、いや5年後にどこまで進歩を遂げているのか大いに気になる研究分野であることは間違いない。 トカナより
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