2017年9月22日金曜日

ロシアから燃料密輸か、北朝鮮船「疑惑の航路」

今年ロシアから燃料を積んで出港した北朝鮮籍の船舶のうち少なくとも8隻が、違う行き先を申告しながら北朝鮮に航行していた。これは国連制裁逃れとして頻繁に使われている手口だと、米政府関係者は指摘する。

8隻の動きを記録したロイターの船舶追跡データによって明らかになった。ただ、出港後の行き先変更は禁止されておらず、これらの船舶による違反行為の確証は得られていない。また、これらの船が燃料を北朝鮮で荷下ろししたかは不明だ。

だが米政府関係者は、航行中の行き先変更は、核開発を巡り国連安全保障理事会が課した制裁措置を回避するために北朝鮮政府が使う典型的な手段だと指摘する。

こうした行き先変更や、海上輸送に複雑な形でさまざまな仲介企業が関わっていることが、北朝鮮向けの燃料供給量をチェックし、国連制裁で定められた燃料の輸入上限が守られているかを監視する作業を困難にしている。こうした仲介企業は、海外に拠点を持つものも多い。

「収入確保の努力の一環として、北朝鮮の政権は、海運ネットワークを使って物品を輸出入している」と、米財務省のビリングスリー次官補は今月の米議会公聴会で証言した。

「北朝鮮は、詐欺的な慣行を用いてこれらの物品の本当の原産地を隠している。普段から船籍や書類を虚偽申告をしている」と、同次官補は付け加えた。

<マドゥサン号の航路>

問題となった8隻は、ロシア極東のウラジオストク港またはナホトカ港を出港。ポート・ステート・コントロールには、行き先として中国か韓国と申告していた。

ロシアを出港後、これらの船は北朝鮮の金策、清津、興南区域、羅津の港の沖でデータに記録されていた。中国に向かった船はなく、ほとんどの船が再びロシアに戻っていた。

8隻全てがディーゼル燃料を積んでいたと、ウラジオストクの船舶サービス関連企業の関係者は言う。それぞれの船舶の積載重量トン数は500─2000トンだった。

その中の1隻は、北朝鮮のKorea Kyongun Shippingが所有するマドゥサン号だ。同船は、ロシアのインディペンデント・ペトロリューム・カンパニー(IPC)が所有するウラジオストク港のターミナルで545トンの船舶用燃料を積み込んだ。

ロイターは、マドゥサン号が貨物を積んだ際に発行された船積書類の「船荷証券」を入手した。5月19日付で、カーゴはIPCが所有するハバロフスキーNPZ精製所から来ていた。

同船は、5月20日に出港。ロシアの港湾当局に提出した書類によると、次の寄港地は中国の湛江市の予定だった。船荷証券には、韓国の釜山港と記載されていた。

だが、ウラジオストク出港後、次に記録が残っているマドゥサン号の寄港位置は、北朝鮮の金策港内だった。

他の船は全て、港の周辺付近までの記録しか残っていなかった。北朝鮮の船舶は、断続的に無線中継機を切るため衛星で追跡できなくなると、米政府関係者は語る。

米財務省が実行した2つの制裁措置の関連文書や、米政府が申し立てた訴訟1件に含まれる、違反行為をした疑いのある船舶は、船舶名の記載はないものの、ロイターが入手したマドゥサン号の情報と一致する。

米財務省は6月、北朝鮮に石油を供給し、制裁逃れに加担した疑いがあるとして、ロシアのIPCを制裁対象に追加した。

米政府は8月、シンガポールに拠点を置く「トランスアトランティック・パートナーズ」と「ベルミュール・マネジメント」の2社も制裁対象に指定した。

米司法省は同日、両社を提訴。石油調達を試みていた制裁対象の北朝鮮銀行に代わって、マネーロンダリングを行ったと指摘した。根拠として、IPCがベルミュールに販売し、ウラジオストク港で船に積まれたディーゼル燃料の記載がある5月19日付の船荷証券をあげている。これは、マドゥサン号の船荷証券と同じ日付だ。

トランスアトランティック・パートナーズのアンドレイ・セルビン氏によると、同社は制裁対象の銀行から代金は受け取っておらず、燃料の所有権は船へ積み込まれた後に変更されたと述べた。

「燃料は、中国企業に売った」とセルビン氏は同社が仲介した複数の取引について語った。同氏は、北朝鮮のエネルギー部門で働き、北朝鮮に輸出する燃料調達を行っているとして、米政府のブラックリストに登録されている。

「(積荷を)コントロールすることはできない」と同氏は言う。

セルビン氏は、トランスアトランティック社が石油を積んだ船舶名を明らかにしなかったが、ウラジオストクの船舶サービス筋によると、その中にマドゥサン号も含まれていた。
船荷証券によると、マドゥサン号の積荷の受取人は「LLCスカイ・シッピング」だが、ロイターはそのような企業に関する情報を見つけることができなかった。

ベルミュールは、カーゴの最終的な行き先について知る術がなく、制裁逃れと知りながら協力した事実はないと述べている。

IPCは、取材の求めに応じなかった。同社の親会社で、バミューダに登録されている「アライアンス・オイル・カンパニー」は、IPCが制裁対象に指定された際に、北朝鮮企業と契約関係にあったことはないと否定していた。

米財務省と国務省は、ロイターの質問に回答しなかった。

ロシア外務省は、北朝鮮への石油輸出に関する質問に回答しなかったが、制裁決議は順守していると述べた。ロシア税関は、国境を超える物のやりとりについての情報は提供できないと語った。

ロイターのデータによると、米政府がIPCを制裁対象に追加した後、ウラジオストクに寄港していた北朝鮮船籍の船はすべて去った。ウラジオストクの船舶輸送関係者によると、その際積荷は積んでいなかったという。ロイターは、この事実を関係書類で確認した。

ロシアから北朝鮮に向けた石油や石油関連製品の輸出は、北朝鮮の唯一の主要同盟国である中国からの輸出に比べるとかなり小規模だ。中国は、北朝鮮向け輸出を抑制し始めた一方で、ロシアの対北朝鮮貿易は2017年第1・四半期に全品目合わせて2倍以上に膨らみ、3140万ドル(約35億円)に達した。

ロシアの対北朝鮮貿易は、北朝鮮による相次ぐミサイル発射や、同国が水素爆弾と主張する核実験の強行で、より厳しい目にさらされている。  大紀元日本より

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