試薬を加えると、目の前にあったはずの細胞が消えていく。大阪大学と理化学研究所の研究チームは、こんな不思議なテクニックを使った病気の診断技術を開発している。たんぱく質などを溶かす試薬で細胞を透明化し、特殊な顕微鏡を使ってがんなどを早期発見する。将来は人工知能(AI)を駆使した全く新しい病気の診断法につながると期待している。
大阪府吹田市にある大阪大学大学院医学系研究科の研究室。野島聡助教が容器に試薬を加えると、細胞が透け始めた。セ氏37度で振動を与えながら培養すれば、1週間くらいで細胞はほぼ完全に透明になる。野島助教は「簡単で費用も安い」と説明する。
細胞を透明化する試薬は理化学研究所の上田泰己グループディレクターらが開発した。上田ディレクターは体内で時間を刻む時計遺伝子の研究で有名だ。神経細胞を詳しく調べるために細胞を透明化する試薬を開発した。試薬を使った透明化技術の名前は「CUBIC(キュービック)」。脂肪やたんぱく質などを溶かす効果があり、血管などの構造を残しながら透明にしてしまう。野島助教はこの試薬が病気の診断に活用できるとして、上田ディレクターに共同研究を持ちかけた。
病気の診断では、肉眼ではみえない蛍光をとらえる特殊な顕微鏡を使う。蛍光色素で透明な細胞を染めた後、顕微鏡で見ると、細胞の内部が1~5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの間隔で輪切りしたかのような画像を得られる。この画像データを重ねれば、細胞の3次元(3D)画像ができあがり、「血管などの様子がはっきりと分かる」(野島助教)という。患者から提供を受けた肺と大腸の細胞で試みたところ、きれいな3次元画像が得られた。
患者の細胞を取り出して病気の有無を調べる病理診断では、細胞内の核などに色をつける「HE染色」という試薬が古くから使われている。新技術でリンパ節に大腸がんのがん細胞が転移しているかどうかを見分けたところ、これまでのHE染色では見落としていたがん細胞が発見できた。新技術はHE染色に代わる病理診断法になる可能性があり、野島助教は「早期発見につながる」と期待を膨らませる。
将来はAIを駆使した診断にもつながりそうだ。蛍光顕微鏡を使うため、得られた細胞画像のデジタル化も容易だ。過去に蓄積した細胞のデータと比較して、病気かどうかをコンピューター上でAIが診断できるようになる。細胞を消してしまう透明化技術が、医療の未来を変えるかもしれない。日経新聞より
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年9月22日金曜日
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