最初に、そのニュースを伝えたのは、オーストラリア唯一の全国紙である「オーストラリアン」(8月1日付)だった。
現地特派員によれば、
「記事によると、フライデンバーグ環境大臣が7月31日、西オーストラリア州の海岸でサーフィン中にサメの犠牲になった17歳少女の遺族と面会。その後、政府系研究所の科学産業研究機構に、サメ襲撃事件の増加とクジラの生息数の増加に因果関係があるのかどうかを至急調査するよう指示を出したということでした」
西オーストラリア州では、2000年以降、サメによる死亡事故がすでに15件も起こっている。
「オーストラリアンの取材に、フライデンバーグ環境大臣は“クジラの生息数について何が起こっているか、よりよく理解したい。なぜなら、クジラの死骸をホオジロザメが食べていることを承知しているからだ”というコメントも出していました」(同)
ザトウクジラやミナミセミクジラなどは5月から12月にかけての繁殖期、西オーストラリア州沿岸部に移動。すると、サメもその付近に集まってくるという。
遭遇確率の上昇
日本鯨類研究所の大隈清治名誉顧問に聞くと、
「サメは生きたクジラを襲うことはありませんが、確かに死骸は食べる。クジラが増えれば、自動的にその死骸も増えますから、サメにとっては食料が豊富に得られることになります。すると、サメの個体数が増加し、当然、人間との遭遇確率は上昇する。その結果、サメによる人的被害が多くなってきているのです」
しかも、オーストラリアではクジラだけでなく、ホオジロザメを含むすべてのサメも保護対象なのである。
元水産庁漁場資源課長で、東京財団上席研究員の小松正之氏が解説する。
「科学的見地からは、反捕鯨に理屈は見つかりません。クジラが絶滅するようなことはなくなったからです。なのに、オーストラリアが反捕鯨を唱えるのは、1つは国益のため。畜産大国なので、クジラよりも牛や豚などが食卓に並ぶ方が国が儲かるからです。だから、エコテロリストと言われるシー・シェパードをバックアップする姿勢を崩していないのです」
もう1つは、国民ウケするからだという。
「オーストラリアには、未だに白人国家だった名残があります。そのため、クジラやサメを食するような東洋的で異質な文化を叩けば、政治家は国民の支持を得やすい。挙げ句、クジラやサメよりも、人命が軽んじられるということになってしまったわけです」(同)
本末転倒としか、言いようがないのである。 デイリー新潮より
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