2011年8月28日日曜日

欧州中央銀行(ECB)内部分裂か

欧州中央銀行(ECB)は創設以来最も深刻な内部分裂に直面しており、果たしてユーロ圏債務危機にきちんと対処できるのか、市場では不安視する声が上がっている。


 ECBは今月、パニックの色合いを強める金融市場の鎮静化に向けて、債券買い入れを再開したが、それは全会一致の決定ではなかった。

 ECB政策理事会は、ユーロ圏17カ国の中銀総裁を含む23人で構成する。金融政策について見解が分かれることは避けられず、創設時から予想はされていたが、現在のような危機の中で一致団結できないでいることから、一部のアナリストは、その危機対応能力を疑問視している。
 ベレンベルグのエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「ECB史上、最も大きな内部分裂だろう」と指摘。「ECBのメッセージや、債券買い入れの効果を鈍らせる可能性がある」との見方を示した。 

 <債券買い入れへのECBの意欲に疑問符> 

 債券買い入れ再開の決定は、財政悪化が深刻な諸国が強く支持したとされている。一方、関係筋によると、バイトマン独連銀総裁やドイツ出身のシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したもようだ。
 反対派の影響力の強さは、ECBが債券買い入れ再開を発表したやり方にも表れている。ECBは債券買い入れのニュースを声明の最後のほうに挿入、「ユーロ圏の物価安定のため」との断り書きを付け加えた。
 こうしたことは、ECBは債券買い入れには実は積極的ではなく、ユーロ圏救済基金がその役割を肩代わりするまでの間だけ、仕方なく実施するにすぎない、との強烈な印象を、投資家に与えることになった。

政策理事会内部の対立が浮き彫りになったことで、イタリアやスペイン、その他の諸国をめぐる懸念が今後高まった際に、ECBが債券買い入れを拡大する気があるのか、市場関係者の間では疑問が生じている。


 PIMCOのポートフォリオマネジャー、アンドリュー・ブザムワース氏は、ECBがイタリアとスペインの国債利回りを5%に維持できるかとの問いに「ECBのコミットメントには不透明感がある。ECBは今は、その水準維持に必要なだけ買い入れているが、今後資金流出が加速しても、5%の防衛にコミットするだろうか」と疑問を投げかけた。
 実際、ECBが先週実施した債券買い入れは143億ユーロ規模で、その前の週の220億ユーロから減少、2010年5月と同じパターンをたどっていることが示された。当時は、165億ユーロ規模の買い入れでプログラムが始まったが、その後、買い入れ額は急速に減少した。 

 <景気が一段と悪化すれば、ECBは再び団結へ> 

 ECBの内部分裂が危険なのは、富裕な国の国民の間で広がっている、ユーロ圏弱小国を支援することへの懐疑論が一段と強まることだ。
 ドイツのウルフ大統領は24日、演説でECBの債券買い入れの合法性に疑問を呈した。ドイツの主要メディアは演説内容を詳細に報じた。

 PIMCOのブザムワース氏は「オランダやドイツなどの主要国において、国民の反発が強まれば、ユーロの購買力への信頼感が損なわれる」と指摘。「そうなれば、ユーロ圏から資金が逃避することになりかねない。これは、政策理事会の分裂よりも、深刻な脅威だ」と述べた。 

 内部分裂は、トリシェECB総裁の後任として11月にECB総裁に就任する、ドラギ・イタリア中銀総裁の手足を縛ることになるだろう。
ECBが再び団結するには、ユーロ圏経済が一段と悪化することが必要なのかもしれない。そうなれば、ECBメンバーは、08年のようなリセッション(景気後退)を繰り返さないよう、力を合わせるだろう。


 8月の独業況指数が大幅に低下し予想も下回るなど、ドイツの経済指標は最近悪化している。これが、ECBの再団結を促すかもしれない。
 ベレンベルグのシュミーディング氏は「経済は今、欧米債務危機を受けた信認失墜に苦しんでおり、それが市場の混乱に拍車をかけている」と指摘。「金融危機が実体経済に影響していることが明らかになれば、(債券買い入れへの)独連銀の反対は弱まる可能性がある」と述べた。
(ロイターより)

経済的に余裕がある北欧と財政危機にある南欧との対立が表面化した結果である。経済的に余裕がある国の国民が、いつまで財政支援をしなければならないのか疑問符を持つようになったこと現れである。ユーロ圏で経済的に順調な国は、そのお金で自国民のために使って欲しいと思うのは自然な感情であろう。先が見えないPIIGSにいつまでも大量の資金を融資続けることに懐疑的になってきたのではないかと思う。PIIGSも財政支援が無くなれば国家破綻の道しか残されていない。それが、行くところまで行けばユーロ圏は崩壊の危機を迎えるかもしれない。これも、いつ崩壊するか時間の問題である。経済的に順調だったドイツもここに来て、経済的成長が鈍化してきたことも、対立の原因の一つであろう。ドイツがマイナス成長に陥れば、その時はユーロ圏の再団結をするかユーロ圏の崩壊も考えられる。

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