2011年8月12日金曜日

海底に眠るレア・アース

電気自動車や薄型テレビをはじめとした、ハイテク製品を作るのに欠かせないレア・アースが、深海底に大量に眠っていることを東京大学などの研究チームが発見しました。名前の通り、地上にはまれにしか存在しないはずの元素群が、なぜ深海底に集まっているのか。深海底にそびえる海底火山山脈と関係があるらしいことが分かりました。

発見したのは、東大大学院工学系研究科の加藤准教授たちです。東大海洋研究所が1968年から84年に掛けて太平洋の各地27ヶ所の深海底で採取した柱状の堆積物に含まれる元素の種類と濃度を調べました。海底からの深さ1㍍置きに取り出した、全部で456個の試料を分析した結果、太平洋の広い地域の深海底堆積物中にレア・アースが高濃度で分布している様子が浮かび上がってきたといいます。
海洋研が採取した柱状堆積物は海底からの深さが10㍍以下です。より深いの堆積物を調べる必要がある。加藤さんたちは、日本を含む多くの国が参加して1969年から2002年まで行われた「深海掘削計画/国際掘削計画」で採取した深海底堆積物に注目しました。海底からの深さ50㍍ぐらいまでの堆積物がそろっています。

タヒチ島周辺

加藤さんたちは、保管先の米テキサスA&M大学に出向き、太平洋の各地51ヶ所で採取された柱状堆積物を選び出し、その中から、海底からの深さ1㍍置きに取り出した、全部で1581の試料を持ち帰り、分析しました。その結果、仏領タヒチ島周辺の南東太平洋と、ハワイ諸島の東西に広がる中央太平洋の、二つの領域の深海底堆積物にレア・アースが特に集まっていることが明らかになりました。
南東太平洋の深海底堆積物の濃度はレア・アース全体で1000~2230ppm、重度希土類は200~4300ppm。中央太平洋は、それぞれ400~1000ppmと、70~180ppmでした。従来、世界でもっとも重要なレア・アース鉱床とされている中国南部の「イオン吸着型鉱床」に匹敵、重希土類に限れば約2倍に相当します。
何故これほど高い濃度で存在するのか。加藤さんは深海底堆積物中にあるレア・アースの分布を見ていて、あることに築きました、深海の海水に含まれるヘリウム同位体の濃度分布と一致していたのです。
深海の海水に含まれるヘリウム3の起源は、太平洋の深海底のそびえる海底火山山脈などから放出される熱水です。熱水に含まれる何らかの物質がレア・アースの濃集にに関わっているのではないかと考えた加藤さんは、深海底堆積物の分析で得られたデータを解析しました。その結果、2種類の物質が浮かび上がったといいます。
鉄質懸濁物質とフィリップサイトです。鉄質懸濁物質は、海底火山山脈から熱水とともに吹き出してくる物質の一つです。フィリップサイトは、マグマが海水で急速に冷やされたときに出来るガラスが変質した物質です。どちらもレア・アースを吸着する性質がることから、熱水とともに海水中に漂いながらレア・アースを吸着し、ゆっくりと深海底に沈殿したと考えられます。

コロンブスの卵

レア・アースの濃度がもっとも高かったのは、東太平洋海膨から約2000㎞離れたところで、それよりも近い範囲では余り高くありませんでした。鉄質懸濁物質やフィリップサイト以外の物質が多く、しかも急速に堆積するため、相対的に濃度が低くなっていると見られます。
加藤さんは「深海底の堆積物を調べた過去の研究報告を見ると、レア・アースが豊富に存在する事が示唆されていた」誰も注目していなかったので気づかなかっただけで、〝コロンブスの卵〟、のようなものとも言える。しかし、確かな証拠をつかむために2000以上の試料を調べる労力は並大抵ではなかった」と話しています。

4平方キロに日本の1年分

レア・アースは、周期律表で57番のランタンから71番のルテチウムまでの15元素の総称です。21番のスカンジウムや39番のイットリウムを含める場合があります。59番のプロメチウムは自然界に存在していません。64番のガドリニウムから74番のルテチウムまでの8元素を重希土類と呼びます。
独特の光学特性や磁気的特性を持つため、先端産業を支える重要な資源となっており、特に希土類の需要が近年急速に高まっています。現在、中国が、世界で必要とする量の97%を生産しています。
太平洋の深海底に眠るレア・アースの量は、加藤さんの試算によると南東太平洋と中央太平洋の二つの海域を合わせるだけで陸上の埋蔵量の約1000倍、南東太平洋の深海底を4平方キロの範囲で、深さ10㍍掘り出すだけで、日本で必要とされる量の1~2年分を賄えるといいます。
レア・アースを豊富に含む深海底堆積物が存在する海域は、一部を除いて公海上ですが、加藤さんによれば、手続きを踏めば鉱区として獲得することは可能、水深3000㍍~6000㍍の所に存在する採掘上の難点も、現在の技術を駆使すれば克服できると、加藤さんは見ています。
薄い酸性水溶液で簡単に抽出できることができ、ウランやトリウムなどの放射性物質を含まないことも利点だといいます。(新聞報道より)

日本人の学者は本当に粘り強い存在ですね。太平洋の各海域を細かく調査し、レア・アースの存在を調査するという、日本人でないと出来ないことだと感心してしまいます。これが実用化されれば、中国からの輸入に限らなくても、必要なレア・アースが手に入るという、中国資源覇権を阻止することが出来ると思います。

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