政府は米国製の次世代ステルス戦闘機F35を中期的に100機程度購入する方向で検討に入った。複数の関係筋によると、5年間で40機程度を購入し、その後に60機程度を継続購入。総額1兆円程度の調達コストを見込んでいる。
2019年1月から始まる日米通商交渉で、米国が要求するとみられる日本からの自動車輸出削減などで、米側の「配慮」を引き出す効果などを狙っているとの声も、政府・与党内で浮上している。
<5年間に最大40機購入の方向>
ブエノスアイレスで11月30日に開かれた日米首脳会談では、トランプ米大統領が「日本はF35など大量の戦闘機を買ってくれており、われわれはそれを高く評価している」と謝意を表明した。
これに対し、日本政府高官は、日本が導入決定済みの42機のF35購入に対する「御礼」と説明している。
しかし、関係筋によると、政府内では今月中にまとめる防衛大綱や中期防衛力整備計画に、F35の追加購入を盛り込む方向で最終調整が進んでおり、与党幹部は「トランプ大統領は、新たに大量購入することへの御礼をしたのではないか」と解説する。
航空自衛隊(訂正)は現在、F15戦闘機を200機保有。そのうち100機を改修して継続使用し、残りの100機については改修に適さないため、後継機種への買い替えが水面下で検討されてきた。
関係筋の1人は、第1弾として5年間で30─40機、可能であれば最大40機程度を購入し、その後の購入も含めて中期的に100機を調達するとの有力な選択肢があると説明する。
経済官庁幹部によると、購入初年度の2019年度予算では、数機分の予算が盛り込まれる可能性があるという。仮に8機ならば800億円程度となる。
このF35大量購入について政府・与党関係者は、ここ数年で急速に強化されている中国とロシアの航空戦力に対抗するためだと説明する。すでに中国はステルス戦闘機J20を量産する見通し。このままでは質・量ともに、日本が中国に対して劣勢になるとの見通しが、防衛当局者らから示されていた。
<トランプ大統領の心証好転狙う>
しかし、複数の政府・与党関係者は、日本を取り巻く安保・防衛環境の悪化だけでなく、日本外交の「基軸」である通商・外交を包含した対米関係を戦略的に見て行った高度の政治的な決断であると明かす。
年明けからスタートする日米通商交渉の前提として、今年9月の日米首脳会談後に発表された共同声明では「交渉結果が、米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること」という文言が明記された。
日米通商交渉に詳しい複数の関係者は、年間約7兆円の対日貿易赤字のうち、4兆円が自動車輸出が占め、米国からみれば、牛肉や防衛装備品の輸出拡大よりも、自動車輸入の削減が、より効果的だと映っていると指摘する。
阿達雅志・国土交通大臣政務官は11月12日の講演で、日米交渉は「日本から米国への年174万台の自動車の輸出。これを何とか減らせという話になると思う」と指摘した。
ハガティ駐日米大使も11月16日、日本記者クラブで講演・記者会見し、米国の対日貿易赤字削減のためには、日本メーカーによる自動車輸出削減や現地生産の拡大、米国車の輸入拡大、農産品の輸入拡大のいずれが最重要かとの質問に「大変複雑な質問だが、答えは単純で、それらすべてが必要だ」と述べた。
こうした中で、F35の大量購入を表明すれば、交渉の行方を左右するトランプ大統領の「心証」を好転させ、日米通商交渉にもプラスに働くとの思惑が、日本政府内で台頭している。
実際、先の20カ国・地域(G20)首脳会議の合間に開かれた日米、米独の首脳会談を比較すると、「謝意」を表明された安倍首相とは対照的に、メルケル独首相はトランプ大統領から対独貿易赤字の大きさに対し、ストレートに不満を表明され、明暗を分けた。
ただ、F35購入が、米国の通商圧力にどの程度の直接的な効果があるのか、楽観的な見方を戒める声も政府内にある。
茂木敏充経済再生相は、4日の閣議後会見で、トランプ大統領の謝意に関連し、日米通商交渉への影響は「分からない」としつつ、「首脳間で非常に信頼関係が醸成されている雰囲気は、通商交渉を進めるうえでもプラス」と述べた。大紀元日本より
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2018年12月5日水曜日
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