2018年9月7日金曜日

世界の鉄鋼生産の50%を牛耳る中国、最強の鉄鋼メーカーをめざし

世界最大の鉄鋼産出国である中国で、鉄鋼業界の大規模な再編が加速しそうだ。中国政府が「鉄鋼業再編発展基金」(鉄鋼業再編ファンド)の創設検討に入ったと、経済系メディアなどが伝えている。鉄鋼業の再編ファンドは、2017年4月に第1号ファンドが組成されて以来、今年1月までに3つのファンドが作られている。新ファンドの組成によって、企業の買収・合併を加速する狙いがあるという。

中国の粗鋼生産量は、世界の生産量の約50%を占める。世界鉄鋼協会の統計によると2017年の世界全体の粗鋼生産量は16億8900万トン、うち、中国は8億3170万トンで49.24%のシェアを占める。ただ、中国には国有の鉄鋼会社が100社、民間も含めると700社程度の鉄鋼メーカーが存在するといわれる。その生産能力は、2015年当時には12億トン以上に達し、設備稼働率が67%に落ち込むという事態に陥った。以来、生産能力削減を国家施策として実施している。

中国産鉄鋼の需要は、国内需要が7億トン、輸出が1億トンで合計8億トン水準といわれ、2016年に6500万トンの生産能力削減を実施したものの、その後の能力削減は遅々として進まない。国有会社については100社を3分の1に再編する計画で、2016年10月には国内2位の宝鋼集団と6位の武鋼集団が経営統合し、世界第2位の鉄鋼会社「中国宝武鋼鉄集団(China Baowu Group)」が誕生。4位の鞍鋼集団も中堅の本鋼集団との合併を協議している。しかし、中央政府が管轄する企業どおしの統合に対し、異なる省が保有する鉄鋼会社や民間鉄鋼会社を巻き込んだ再編は、利害関係の調整が難しく、再編が足踏みするようになっている。

そこで、専門ファンドを通じ、業界再編を円滑化しようとしている。中小クラスの民間鉄鋼企業は、経営が苦しくとも個別企業同士の買収や合併は、実現に向けたハードルが高い。当局はファンドを活用することによって、独立路線を堅持した再建も可能になり、経営統合への抵抗感が弱まると判断しているようだ。

すでに発足したファンドは、中国最大手の宝武集団を発起人として2017年4月7日に組成された「四源合鉄鋼産業調整基金」があり、募集額は400億(6480億円)~800億人民元(1兆2960億円)に設定した。1本目の鉄鋼産業調整ファンドとなる。

これに続いて同年7月28日、河北鋼鉄集団を発起人とする「長城河鋼産業発展基金」が立ち上げられた。さらに、山西省国投、陝鼓集団、中冶京誠、建竜集団(北京建竜重工集団有限公司)の4グループによって、3本目の「山西鋼鉄産業構造調整基金」が18年1月9日に立ち上げられた。当初は50億人民元(810億円)を募集。最終的に規模を500億人民元(8100億円)に拡大する予定だ。

中国政府は、過剰生産能力の淘汰・廃棄を進めるなかで、業界大手10位の生産・販売シェアを高める目標を打ち出している。業界大手4社の生産シェアは、15年時点のデータで日本が83.3%、米国が70%、EUでは大手8社が64.9%を占めた。一方、中国では大手10社で34.2%にとどまる。2025年に上位10社で60%のシェアを獲得することをめざしている。そうなると、中国の大手鉄鋼会社は、そろって年間生産能力5000万トンを超える可能性がある。

現在、世界の企業別生産能力は世界最大のアルセロール・ミッタル(ルクセンブルク)が9703万トン、第2位は中国宝武鋼鉄集団の6539万トン、第3位が新日鉄住金の4736万トン、第4位が河北鋼鉄集団の4556万トン、第5位がポスコ(韓国)の4219万トンとなる。世界シェアを50%握りながら、企業別には日本や韓国の企業に劣る生産能力しか持たない企業が、中国には多く存在する。この状況を打破し、生産規模や効率性の高い鉄鋼業界を作り上げることをめざしている。

経営規模の拡大に関しては、すでに多くの地方政府が政策や目標を策定している。鉄鋼生産が盛んな河北省では、「2310」の目標を設定した。グローバル競争力を擁する企業2社、実力の高い地方企業3社、特殊技術を有する企業10社を育成している。山西省も業界集約化に着手。鉄鋼企業を27社から10社にまで減らすと宣言した。四川省では、年産能力1000万トンクラスの大手を育成し、競争力を高める計画。鉄鋼生産額を3500億人民元(約5兆6900億円)に拡大させる構想がある。

なお、中国の米国への鉄鋼輸出は微々たるものだが、ベトナム等を経由して米国に輸出されているケースがある。米国は、このような第三国経由の製品であっても中国産の製品への関税を見逃さずチェックし、関税強化の手続きを進めている。このため、中国メーカーは、アフリカ諸国などへの輸出を計画しているが、このようなグローバル対応力を強化する上でも、規模の拡大は不可欠とされている。サーチナより

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