2017年9月3日日曜日

“空気の力で建物浮かし地震の揺れ遮断”

空気の力で建物をわずかに浮上させ、水平方向と上下方向の地震の揺れをいずれも遮断する装置の開発に防災の研究機関や民間企業などで作るグループが成功しました。今後は装置にビルを乗せて実験を行うほか、将来は街の一角を浮上させる「フロートシティ」という究極の対策も視野に入れています。
装置を開発したのは防災科学技術研究所と日立製作所、それに摂南大学の研究グループです。

装置から圧縮した空気を噴射し、その力で浮き上がることで地面との間に100分の6ミリのわずかな隙間を作り地震による水平方向の揺れを遮断するほか、特殊なバネで上下方向の揺れも吸収することができるということです。

この装置について、研究グループが兵庫県三木市にある世界最大の振動台「Eーディフェンス」で、去年4月の熊本地震と6年前の東北沖の巨大地震、それに22年前の阪神・淡路大震災で観測された揺れを使って実験した結果、水平方向の揺れの強さを最大で100分の1にまで抑えることができたほか、上下方向の揺れも10分の1以上抑えることに成功しました。

研究グループによりますと、水平と上下の揺れをいずれも遮断できる装置は世界で初めてだということです。研究グループは今後、この装置を大量に並べ、その上に重さ500トンから1000トンのビルを実際に載せて実験を行う予定で、将来は街の一角を浮上させる「フロートシティ」という究極の対策も視野に入れています。

防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターの梶原浩一センター長は「実験は大成功で、今後は上下の揺れをさらに抑えられるよう装置を改良したい。地震に耐えるのではなく、地震を感じない空間を作り、生活を継続できるようなまちの実現に向けて研究を続けていきたい」と話しています。
 
従来の対策との違いと性能
 
今回開発された装置は、地震から建物を守るためにこれまで使われてきた対策とは大きく異なります。

これまでは、建物と地盤の間にゴムや鉛の装置を入れ揺れを伝わりにくくする「免震」や、油圧で揺れを抑えるダンパーなどの装置を設置する「制震」などが使われてきましたが、今回の装置は、小さな穴から毎分800リットルという空気を噴射することで、地面からわずかに浮かせます。装置と地面の間は100分の6ミリしかなく、見た目にはわかりません。

このごく薄い空気の層を作ることで、水平の揺れを遮断できるほか、上下の揺れに対しても衝撃を和らげることができます。
これに加えて、装置に取り付けられた特殊なバネで上下の揺れをさらに吸収する全く新しい仕組みです。

ことし6月に「Eーディフェンス」で行われた実験では、これまでに日本で発生したさまざまな地震の揺れを使って装置の性能を確かめました。

このうち、6年前に東北沖で起きたマグニチュード9.0の巨大地震の揺れには、超高層ビルを大きくゆっくりと揺らす「長周期地震動」も含まれています。仙台市で観測された揺れで実験したところ、地面に当たる振動台は水平方向に大きく揺れるのに対し、装置はほとんど揺れませんでした。

さらに、去年4月、熊本県益城町などで震度7を観測したマグニチュード7.3の熊本地震の本震は、震源が浅い直下型地震で、建物に深刻な被害を与える激しい揺れが観測されています。

実際に観測された揺れに加え、さらに15%強めた揺れも使って実験しましたが、研究グループによりますと、いずれも装置はほとんど動かず、性能を確認できたということです。  NHKニュースより

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