2017年9月16日土曜日

北朝鮮と平行して中東で新たな危機 米は二正面対応迫られる?

世界の耳目が朝鮮半島に集まる中、中東で新たな危機が進行している。イスラム教シーア派の大国イランがシリアからレバノンに覇権を広げ、イスラエルと衝突寸前だ。イスラエル最大の同盟国・米国は、北朝鮮の核ミサイル問題と中東紛争の二正面対応を迫られる可能性が出てきた。(外信部編集委員 三井美奈)
 
イスラエルの危機感を示したのが、今月5日、北部のレバノン国境付近で始めた軍事演習だ。期間は10日間。陸海空の20旅団が参加し、「過去20年で最大」(イスラエル紙ハアレツ)の規模は目を引いた。レバノンのシーア派組織ヒズボラとの、2006年以来の戦争をにらんでのことだ。
 
ヒズボラは1982年、イスラエルのレバノン侵攻に対抗し、イランの支援で発足した武装組織。シリア内戦ではイランの「別動隊」として民兵を送り、1500人以上の犠牲を払いながらアサド政権を支えた。シリアには約7000人が駐留(米国務省、昨年のテロ国別報告書)。実戦経験を積み、武力も格段に強化した。
 
7日には一触即発の事態に発展した。シリア中部ハマの国軍基地がミサイル攻撃された。ヒズボラやイランの軍事専門家が出入りしていたとみられる。ダマスカス近郊では今年2月、4月と立て続けに軍施設が標的になり、いずれもヒズボラの車両や武器庫が爆破された。イスラエルは攻撃について肯定も否定もしていないが、シリアからヒズボラへの武器供給阻止を狙ったのは明白だ。

イスラエルのネタニヤフ首相は8月末の記者会見で「イランはシリアを軍事拠点化している。狙いはイスラエル殲(せん)滅(めつ)だ」と述べ、ヒズボラの背後にイランがいると断定した。政府は次の対ヒズボラ戦争は事実上、イランとの戦いになるとみている。
 
イランはなぜ、イスラエル攻撃をにらむのか。
 
ヒズボラ指導者、ナスララ師の言葉が示唆的だ。「イスラエルがシリアやレバノンを攻撃すれば、アラブやイスラム圏から何万という戦闘員が結集する」と述べ、次の軍事衝突を「イスラエル対イスラム教徒」の構図にする意図を明らかにした。イランは現在、スンニ派盟主サウジアラビアを中心とした「イラン包囲網」への対処を迫られており、対イスラエル戦線を開くことで外交上の孤立を打開したいのだ。
 
緊張の高まりには、米国のトランプ政権にも責任がある。2015年のイラン核合意を「悪い合意」と批判し、サウジ主導の包囲網を後押ししたことで、イランの危機感をあおった。トランプ大統領は7月、レバノンのスンニ派ハリリ首相との記者会見で「ヒズボラは地域の脅威。イランの利害で動く」と述べた。これがさらに、イランとヒズボラに「米国が本格介入する前に決戦」という気持ちを強めさせた。
 
中東はシリア内戦、イエメン内戦と、現時点でもひどく血なまぐさい。トランプ政権は目下、北朝鮮危機に追われているが、新たな中東紛争が加われば、一層の外交の混乱は避けられない。  産経ニュースより

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