2018年12月5日水曜日

IMF「40年でGDP25%減」は本当か 技術進歩考慮せぬ試算

国際通貨基金(IMF)は日本経済に関する年次報告書で、人口減少により、現状の政策では今後40年で実質国内総生産(GDP)が25%超減少すると分析した。
 
現在の日本の人口は1億2645万人だ。今の人口推計によれば、2060年には8674万人になると予想され、31%減少になる。GDPは大ざっぱにいえば、1人当たりの給料に相当する1人当たりGDPに人口をかけ算する、つまり給料の人口分の総和になるので、人口減少になれば、GDPが減少するのは当然である。

ただ、40年間で25%減少というのは、年率では0・7%の減少だ。その程度なら技術進歩などでカバーできる範囲である。

実質GDP成長率は、成長会計によって、技術進歩率、資本増加率と労働投入増加率で説明できる。人口減少は労働投入量の減少になり、その成長率の寄与は、労働投入量に労働分配率をかけたものになるので、0・5%程度の減少になるだろう。

これを技術進歩率と資本増加率でカバーし、実質GDP成長率をマイナスからプラスの0・5%程度に持っていくのはそれほど難しい政策ではない。その場合、40年後の実質GDPは20%程度増加することになる。

ここで鍵になるのは、資本増加と技術進歩であるが、基礎研究で技術進歩の土台をつくるとともに、金融緩和によって設備投資ができる環境が重要となる。どんなに優れた技術でも、設備投資がないと現実社会に生きてこないからだ。

いずれにしても国民生活で問題なのは、1人当たりGDPである。IMFの推計どおりで実質GDPが40年後に25%減少であれば、1人当たりGDPは40年後に6%増となる。年率0・1%程度と、ほとんど成長しないケースなので、もし本当にそうなるとしたら問題だ。

人口減少と経済の関係について、標準的な経済理論では、人口増加は1人当たりの資本を減少させるので貧困の原因となるが、人口減少はそうではない。

ちなみに世界全体を見ると、各国の2000~17年の平均人口増加率を横軸、平均1人当たり実質GDP(給与に相当)成長率を縦軸にすると、右下がりになり、人口減少は1人当たりのGDPを増加させる傾向である。その傾向式を当てはめると0・3%程度は高くなるはずであり、IMFの見積もりは低いといわざるを得ない。

日本の技術進歩率等がゼロでないと、IMFが推計する実質GDP25%減は説明できないので、IMFの試算には不思議な点がある。

本コラムで繰り返して指摘しているが、IMFの日本経済に関する年次報告書は、日本の財務省の意向が反映しやすいので、要注意である。

その報告書では、外国人の労働受け入れを勧めているのも不可解だ。長期的な人口減少に対するには、機械化や人工知能(AI)の活用で、1人当たりの資本増加策を優先すべきだ。消費増税を前提として、その対策が必要とのスタンスも財務省と同じというのも奇妙なものだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)夕刊フジより

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